ロト指揮，レ・シエクルのFRANCE-ESPAGNE
◎シャブリエ 狂詩曲「スペイン」 マスネ 歌劇「ル・シッド」～バレエ組曲 ラヴェル 道化師の朝の歌 ドビュッシー 管弦楽のための映像～イベリア フランソワ＝グザヴィエ・ロト指揮，レ・シエクル <2012.8.24,2013.2.9,2014.5.28> 仏ACTES SUD ASM17 フランスの指揮者，フランソワ＝グザヴィエ・ロトは，２００３年にピリオ ドインスツルメンツのオーケストラであるル・シエクルを設立して，仏Actes Sudから続々と録音をリリースしているところですが，今度は"FRANCE-ESPAGNE" と題された１枚が発売になりました。これはフランスの作曲家であるシャブリ エ，マスネ，ラヴェル，ドビュッシーによる，スペイン風の作品を演奏したも ので，いずれもライヴ録音です。 さっそく聴いてみると，最初のシャブリエの「スペイン」は，大オーケスト ラの派手な演奏というのとは異なり，もっと軽快でニュアンス豊かで，さらっ とした響きが実に快適で，聴いていて心晴れ晴れとする演奏でした。 次のマスネの「ル・シッド」のバレエ音楽は，７つのスペインの舞曲からな る作品ですが，スペイン風のコントラストの強い演奏ではなく，あくまでフラ ンスのバレエ音楽といった，ゆるフワでふわりと踊れるような軽やかさと，ほ どよくリッチな響きが実に快適で，心躍る思いで聴き入りました。 ラヴェルの「道化師の朝の歌」は，作品の違いもあるのか，ややカチッとし た，引き締まった響きとなっており，ほどよいアクセントと，クリヤーなソノ リティとによって，表現力豊かでスケール感のある演奏を堪能させてもらいま した。 ドビュッシーのイベリアは，抜けの良いスカッとした響きをつくり出してお り，各パートの反応も非常に良く，曖昧模糊としたところのない，明晰明解な 演奏によって作品を鮮やかに再現しつつ，ピリオド楽器による１００年前のモ ダンなソノリティとともに，フレッシュに再現していて感嘆するばかりでした。 こうして聴いてみると，このＣＤでのレ・シエクルは，現代のオーケストラ のような力強く輝かしい響きやインパクトは求められないにしても，もっと有 機的で生体への親和性の高い響きによって，聴き手にじわじわと染み入るよう な，味わい深い演奏を聴かせており，現代のオーケストラを聴き慣れた耳から するとカルチャーショックですらありました。 とはいえ，１００年前のフランスでの演奏が忠実に再現されているのかとい うと，決してそうではなく，例えばコンセール・ストララム管の８５年前の録 音を聴いてみると，音の反応のスピードや，響きのシャープさなどは現代の感 覚とはかなり異なっているのですが，今回のＣＤの演奏はそこまで再現してい るわけではなく，現代の聴き手にも違和感の少ない演奏を行っているように思 われます。 録音については，惚れ惚れするような音質でレ・シエクルの演奏を聴くこと ができたので，その意味では，単なるハイフィデリティを越えて，サウンドコ ンセプトやセンスといった面においても見事な優秀録音だと思います。毎度述 べていることですが，これがＳＡＣＤでないことだけが残念です。 そんなわけで，これは１００年前のピリオドインスツルメンツによって，フ ランス近代の管弦楽曲を，軽やかでハイセンスな演奏で再現した，聴くほどに 魅力的な１枚として強力に推薦したいと思います。
2015.8.30
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