マリア・ペロッタのゴールドベルク変奏曲のロッシーニ劇場ライヴ
◎バッハ ゴールドベルク変奏曲 マリア・ペロッタ（ピアノ） <2012.1.12> 伊DECCA 481 1194 伊DECCAから，イタリアのピアニスト，マリア・ペロッタ（Maria Perrotta） が演奏するバッハのゴールドベルク変奏曲が発売になりました。２０１２年１ 月１２日にイタリアのラヴェンナ県ルーゴのロッシーニ劇場で行われた演奏会 のライヴ録音です ペロッタは，イタリア南端部カラブリア州コゼンツァに生まれ，１１歳でベ ートーヴェンのピアノ協奏曲第１番のソリストとしてデビューしており，ミラ ノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院や，パリのエコール・ノルマル音楽院で学 んだ後，ローマのサンタ・チェチーリア音楽院を２００７年に卒業し，ザール ブリュッケン国際バッハ・ピアノコンクールで優勝，ミラノ・シューラ・チェ ルカスキー国際ピアノ・コンクールで優勝するなどしています。 さっそく聴いてみると，非常に明解でクッキリしたタッチと，明るさと落ち 着きとを兼ね備えたシックなソノリティ，知的な解釈と感興との絶妙なバラン ス，さらにはフレーズから巧まず滲み出るカンタービレなど，そのいずれもが 素晴らしく印象的で，開放的で胸の空くような演奏を聴かせてくれています。 これはピアノでの演奏ということで，かなり自在に強弱を変化させている一 方で，テンポやフレージングを大きく動かすことはなく，ほどよい深さの小気 味よいタッチが終始保たれており，これらが相まって，生き生きとした格調あ る表現と演奏の一貫性が実現しているように思われます。 とにかく，このライヴ録音を聴いていると，美しくハイセンスなものに接し ているときの，心が華やぎ，ときめくような思いが湧き起こってきましたし， 聴き終えたときには，最高に美味しいものをいただいたときのような，理屈抜 きの幸福感に満たされる思いでした。 録音については，若干引いた感じの音の捉え方をしており，ピアノの音自体 をクローズアップするのではなく，演奏会場の残響を取り入れた，客席で聴い ているような音となっており，非常に快適な録音に仕上がっていると思います。 これは，いかにもイタリアのピアニストらしい特徴と美質が表れているよう にも思いますが，もしかするとイタリアの音楽が大好きだったバッハが聴いた なら感激するかもしれないな，などと余計なことまで思ってしまうほどの魅力 的な演奏であり，この作品の数々の個性的な名録音に比しても決して引けを取 ることのない，個性的で魅力的な素晴らしい名演として強力に推薦したいと思 います。
2015.2.14
