シャイー指揮，ゲヴァントハウス管のマーラー６番のライヴ映像
ACC 10268
◎マーラー 交響曲第６番 <2012.9.6,7,9> シャイー指揮，ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管 独ACCENTUS MUSIC ACC 10268 (Blu-ray Disc) 独ACCENTUS MUSIC ACC 20268 (DVD) シャイーとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管はマーラーの交響曲のライヴ 映像を継続的にリリースしているところで，これまで第２，４，８番がブルー レイ・ディスクとＤＶＤで発売されていたところですが，今度は第６番のライ ヴ映像が発売になりましので，ブルーレイの方を入手しました。 これは２０１２年９月６，７，９日にライプツィヒのゲヴァントハウスで行 われた演奏会を収録したもので，ボーナストラックとして，この作品について のシャイーのパネルディスカッションの映像が収録されています。 さっそく視聴してみると，第１楽章では，入念で朗々としたスコアの再現を 聴かせており，ドラマチックなうねりの表出にも不足は無いのですが，ペシミ スティックな趣は微塵も無く，この長大で複雑な楽章を，スムーズなアンサン ブルと明朗な響きとによって，ポジティブで充実した演奏によって描き出して いて，こんなに明るくあっけらかんとした演奏でいいのだろうかと思う反面， 美しく充実した響きにはただただ聴き惚れるばかりでした。 第２楽章は，アンダンテ・モデラートが演奏されていますが，落ち着き払っ た静けさの中で，仄かな感興とともに，大変に美しいカンタービレを奏でてお り，さらには一抹の寂寥感も漂っており，聴いていて心震える思いのする，大 変に印象的な演奏でした。 第３楽章のスケルツォは，軽快でスリリングなアンサンブルが聴きもので， 引っかかったようなところがあまりなく，スムーズな流れとともに，ダイナミッ クで明快な演奏をつくりあげており，指揮者のタクトにも俊敏に反応していて， テクニカルな面での完成度も高く，けっこうワクワクする思いで聴き入ってし まいました。 第４楽章ににおいても，深刻な表情を見せることなく，スムーズで整然とし たアンサンブルは歌心に満ち，この楽章独自の落差のある表現を歯切れよくクッ キリと描き出しており，聴いていてスリリングな表現にはゾクゾクしますし， 美麗で劇的な演奏表現には充実した聴き応えがあり，そのめくるめくオーケス トラサウンドのパノラマに酔いしれる思いがしました。 こうして聴いてみると，この演奏は特色が極めて明快で，この作品を暗く悲 劇的に捉えたりすることなく，シャイー自身の明るくポジティブな視点でスコ アにアプローチし，明朗な感興と歌心に満ちた，ダイナミックで聴き応え十分 の演奏を築き上げています。 なので，この演奏の水準の高さと，明朗な演奏のコンセプトと，充実したオ ーケストラサウンドのパノラマを存分に堪能し，耳の快楽に浸ることができる のであれば，これほど贅沢で充実した演奏はそうあるものではなく，最高度の 評価をし得るのですが，その一方で，この作品ってこういう演奏で本当にいい の？という思いが拭えないのも事実で，この点に関しては，聴く人それぞれと いうほかありません。 私はこの映像をブルーレイで視聴しましたが，画質は鮮明で，カメラワーク もソロのパートを違和感なく捉えており，音質も２４ビットＰＣＭの厚みと充 実感のある響きで聴くことができ，居ながらにしてこれほどのクオリティでオ ーケストラの演奏を堪能できるというのは，本当にいい時代になったものだと 思わずにはいられません。 そんなわけで，これはいかにもシャイーらしい，明るくポジティブで充実感 に満ちた演奏が堪能できるライヴ映像として強力に推薦できるものだと思いま すが，あまりに特色明快であるゆえ，あとは各々の好みや主張に応じて試聴さ れてはいかがかと思います。
2014.3.1
