テンシュテット指揮，シュトゥットガルト放送響のブラームスとマルティヌー
◎ブラームス 交響曲第１番 <1976.9.24> マルティヌー 交響曲第４番 <1973.4.26> テンシュテット指揮，シュトゥットガルト放送響 独CONCEPT CNT 0001-2 これは新たにリリースを開始した，ドイツのCONCEPTというレーベルの記念 すべき第１弾のリリースです。収録されているのはテンシュテット指揮のシュ トゥットガルト放送響の演奏で，南西ドイツ放送の音源です。ブラームスはラ イヴ録音でメルティヌーは放送録音です。 東ドイツ出身のテンシュテットは１９７１年に西側に亡命したのでしたが， このＣＤに収録されている演奏は１９７６年と１９７３年という，西側に登場 して間もない時期の録音であり，また，シュトゥットガルト放送響はチェリビ ダッケが首席指揮者を務めていた時期であり，いったいどんな演奏が聴けるの か楽しみです。 それでさっそく聴いてみると，最初のブラームスの交響曲第１番では，響き の厚みや重量感こそ希薄ですが，いかにもドイツのオケだと思わせる，色彩感 を抑えてカチッと引き締まった硬派な響きと，一糸乱れぬアンサンブルによっ て，誇張のない充実した演奏をつくりあげています。 この演奏でのテンシュテットは，持ち前の周到な指揮によって，細部に至る まで明瞭であると同時に，流れの良さと推進力と前向きな積極性のある，大変 に充実した演奏であり，同時に耳に心地良い演奏でもありました。 続いて収録されているマルティヌーの交響曲第４番は，明るくあっけらかん とした味わいのある魅力的な作品ですが，ここでもテンシュテットはアンサン ブルを精妙にまとめあげて，明晰で快調な演奏をつくり出しており，紛れもな くこの作品の一面を描き出しているのですが，ややシニカルで響きも痩せ気味 の感がしないでもなく，もう少しポジティブで響きの豊かな演奏が聴けたらな お良かったのではないかと思ってしまったのも事実です。 録音については，同じドイツのWeitblickの音質に近いものを感じますが， 質実剛健なだけでなく，響きのニュアンスも確保されており，南西ドイツ放送 音源の質感の高さを味わうことができるのではないかと思います。 そんなわけで，これは西側に亡命して間もない時期のテンシュテットの演奏 を聴くことのできる貴重な録音であるだけでなく，持ち前の精妙な指揮の技が 存分に発揮された充実の演奏を聴くことができ，とりわけブラームスでの清廉 で質実剛健な演奏表現は他に聴くことのできない独自の魅力があって，これは 聴き逃せない充実の１枚として強力に推薦したいと思います。
2009.3.21
