原田英代のチャイコフスキーの四季とラフマニノフのコレッリ変奏曲
◎チャイコフスキー 四季 ラフマニノフ コレッリの主題による変奏曲 原田英代（ピアノ） <2008.5.19-21> 独AUDITE 92.569 (SACD Hybrid) 山口県出身で現在はドイツに在住して活躍している原田英代の最新盤です。 このレーベルからはグリーグの抒情小曲集に続く第２弾の録音となります。嬉 しいことに前回同様，今回もＳＡＣＤハイブリッド盤での発売です。 原田英代は，モスクワ音楽院教授のヴィクトル・メルジャーノフの下で７年 間もの間研鑽を積み，ロシア音楽はライフワークの１つであるとのことです。 さっそく聴いてみると，最初の「四季」では，ややゆったりとしたテンポで， 親密感のあるフレーズを紡ぎ出しており，特にテンポの遅いところでのピアノ の響きには柔らかな余韻があって，作品への自然な共感と優しい眼差しを感じ ますし，聴いていて心満たされる思いのする，大変に魅力的な演奏です。 次の「コレッリの主題による変奏曲」では，克明でキレが良く，強弱の幅も 広い演奏であり，響きも明快でカチッとしいて，ほどよいきらびやかさもあり， テクニックの冴えと演奏のスケール感と力感とを存分に描き出しており，大変 に充実した聴き応えのある演奏を堪能させてもらいました。 こうして聴いてみると，いずれに演奏においても，鮮やかなテクニックと， やや深めのタッチで，スケール感のある演奏をつくり出しており，ピアニスト としての力量，器の大きさ，さらには表現の真正さといったものを感じますし， このピアニストの実力を十分に認識してこなかった不明を恥じるしかない思い です。 録音は響きの良さから録音でも多用されるベルリンのイエス・キリスト教会 で行われており，44.1kHz／24bitのＰＣＭ録音です。ＳＡＣＤレイヤではピア ノの響きのニュアンスとスケール感を存分に聴くことができるのに対し，ＣＤ レイヤでは音が薄くて軽い傾向になり，特に「四季」での柔らかい余韻を聴く ことができないのが残念に思います。 そんなわけで，これは収録されている両作品の掛け値無しの名演と言いうる と思いますし，音質も優れており，聴き応え十分の充実の１枚として強力に推 薦したいと思います。
2009.3.1
