ハイティンク指揮，ロンドンフィルのショスタコーヴィチ１０番ライヴ
◎ショスタコーヴィチ 交響曲第１０番 ハイティンク指揮，ロンドンフィル <1986.8.28> 英London Philharmonic Orchestra LPO-0034 ロンドンフィルの自主制作レーベルＣＤで，ハイティンク指揮のショスタコ ーヴィチの交響曲第１０番が発売になりました。 ハイティンクは１９７７年から８４年にかけて，ロンドンフィルとコンセル トヘボウ菅を指揮して英デッカに西側初のショスタコーヴィチの交響曲全曲録 音を行っており，１９７７年１月のロンドンフィルとの第１０番は全集録音の 最初の録音でした。 今回は同じロンドンフィルを指揮しての１９８６年のライヴ録音であり，円 熟を深めつつあったハイティンクがライヴでどんな演奏を聴かせてくれるのか 楽しみです。 さっそく聴いてみると，ロンドンフィルの響きはやや明るいものの，ほどよ いテンションと，反応の良さがありますし，ハイティンクの指揮も持ち前の明 快さに加えて，大胆さと図太さがあって，作品の力強い描写を聴かせています。 ここでのハイティンクは，単に意欲的な演奏というレベルではなく，何かに 駆り立てられているかのような，切迫感のある演奏をつくり出しており，聴き 手に向かって強烈なインパクトと圧力で迫ってきて，ＣＤで聴いているなんて ことを忘れて圧倒され，引き込まれてしまうほどのリアリティと表出力を有し た演奏というほかありません。 これはロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ録音で，聴き上手のロンド ンの聴衆は，この目覚ましい演奏にはさすがに圧倒されたようで，演奏終了と 同時に 録音については，良好なアナログ録音の音質を堪能することができるもので， ヒスノイズもあまりカットしていないのも好ましいと思います。どういうわけ か音が僅かにかすれ気味なのですが，鑑賞の妨げになるようなレベルではあり ません。 そんなわけで，これはショスタコーヴィチの交響曲をレパートリーとしてい るハイティンクのライヴ録音の１つであるというだけでなく，聴く者に十二分 なインパクトと充実感をもたらしてくれる名演として，強力に推薦したいと思 います。
2008.9.30
