ズヴェーデン指揮，ロンドンフィルのマーラー５番ライヴ
◎マーラー 交響曲第５番 <2008.1.16> ヤープ・ファン・ズヴェーデン指揮，ロンドンフィル 英London Philharmonic Orchestra LPO-0033 これは，ロンドンフィルの自主制作レーベルでの最新盤で，ロンドンのロイ ヤル・フェスティバル・ホールでの演奏会のライヴ録音です。 指揮者のヤープ・ファン・ズヴェーデン（Jaap van Zweden, 1960-）は，ア ムステルダム生まれで，ロイヤル・コンセルトヘボウ管のコンサートマスター を勤めた後に指揮者となり，現在はオランダ放送フィルの首席指揮者として日 本のエクストン・レーベルに積極的に録音も行っているので，日本でもおなじ みの指揮者ではないかと思いますが，ロンドンフィルを指揮してどんなマーラ ー演奏を聴かせてくれるのか楽しみです。 それでさっそく聴いてみると，アンサンブルの精度も高く，的確にスコアを 再現しており，ダイナミックレンジも広く，キレとスピード感もあって，聴い ていて爽快な颯爽とした演奏をつくり出している反面，厚みや重量感には乏し いですし，響きも淡泊で，薄めの演奏を聴かされているような印象があって， 物足りなく感じられかねないところがあります。 しかしながら，ここでのズヴェーデンの指揮は，主観的な思い入れを排した リアルで鮮明な演奏を描き出しており，独自のドライな感性によって，これま で聴いたことのない新鮮な表現を聴かせてくれています。 この演奏が終了した際には，かなり盛大な拍手が起こっており，聴き上手と いわれるロンドンの聴衆も，この演奏の新しさや魅力にすっかり魅せられたよ うでした。 音質については，通常のＣＤということもあり，鮮明さはリアルな質感はそ れほどでもありませんが，ダイナミックでバランスが良く，反応の良い音質で この演奏の姿を見事に再現していると思います。 そんなわけで，この演奏は，従来のスタンダードなマーラー演奏のようなず しりとした聴き応えに耳慣れていると，パッションや劇性に乏しい凡庸な演奏 にしか思えないかもしれませんが，ひとたびそのユニークな表現の世界に気付 くならば，現代的な感性による新しいマーラー演奏を堪能できるに違いない１ 枚であり，ぜひ一聴をお薦めしたいと思います。
2008.7.7
