ハイティンク指揮，フランス国立管のマーラー５番ライヴ
◎マーラー 交響曲第５番 <2004.6.30&7.1> ハイティンク指揮，フランス国立管 仏NAÏVE V 5026 ハイティンク指揮フランス国立管によるシャンゼリゼ劇場でのライヴ録音で す。このコンビのマーラーのライヴは２００１年１０月の第６番が３年前に発 売されていました。 さっそく聴いてみると，冒頭のトランペット・ソロの刺激的なところのない， 軽やかでクリヤーな音色が大変魅力的で，それに続く演奏も，大変にダイナミッ クでキレのある充実した響きとともに，明晰で惚れ惚れとするほど美しい美演 を聴かせています。 ハイティンクの演奏というと，オーソドックスでまとまりの良い表現を聴か せていることが多いように感じていますし，それゆえ際立った印象を抱くこと も少ないのも事実なのですが，しかし，この演奏での穏当で力みのない，透徹 した表現は，フランス国立管の素晴らしい響きと相まって，これまで聴いたこ とがないようなこの作品の美しい世界を見事に描き出しています。 私も正直なところ，ハイティンクとフランス国立管がこれほど見事な演奏を 行っているとは全く認識できておらず，その不明を恥じ入る他ないのですが， これは最近のハイティンクの進境に加えて，フランス国立管との相性も絶妙で， ややもするとアンサンブルが緩みがちなこのオケの持ち味と潜在能力を見事に 引き出し得ていると思います。 反面，この作品の演奏としては，シリアスさや沈痛さ，あるいはエモーショ ナルな葛藤を描き出すといった面は希薄ですし，そういった面からこの演奏を 聴くならば，あまりに平穏で安穏としているように感じられるかもしれません が，それはこの素晴らしい演奏に対するないものねだりなのではないでしょう か。 そんなわけで，このライヴ録音は，この作品の演奏でかつて聴いたことのな いほどに透徹した美しさと，フランス国立管のカラフルなまでに美しい響きと， 端然とした表現に彩られた，至福のような演奏であり，この演奏の特色を見事 に捉えた録音も素晴らしく，まさに聴いてビックリの超名演として強力に推薦 したいと思います。
2005.7.2
