吉松隆と田部京子のプレイアデス舞曲集２
◎吉松隆 ４つの小さな夢の歌 ３つのワルツ ピアノ・フォリオ・・・消えたプレイアードによせて（１９９７） プレイアデス舞曲集第６集（１９９８） 第７集（１９９９） 第８集（２０００） 第９集（２００１） ２つのロマンス（１９９６） 田部京子（ピアノ） DENON COCQ-83546 １９９６年に第５集までの録音が発売されていた，田部京子の演奏による， 吉松隆のプレイアデス舞曲集の続編となるＣＤが５年ぶりに発売されました。 このシリーズについては，前作のＣＤが発売になった際に，作品のピュアな 響きと，シンプルかつ繊細なメロディ，そして作品の魅力を見事に再現した田 部京子の純度の高い演奏が，美しいものや癒しを求める聴き手の心を捉えたの でしたが，今回のＣＤもその延長線上にあるものなので，「どうか虚心にこの 作品と演奏の魅力に触れられてはいかがでしょうか。」と言うだけでこのＣＤ に対する感想はお終いにしてもいいくらいです。 実際に聴いてみても，聴く前に想像していたとおりというか，期待どおりと いうか，繊細な感受性を譜面に記すことのできる類い希な作曲家と，繊細な感 受性を音に反映させることのできる類い希なピアニストとの一期一会ともいう べき録音が再び実現し，シンプルなようでありながら，隅々に至るまでこれ以 外にあり得ないと感じさせる，息を呑むほどにピュアな完成度には，聴いてい て心が洗われて透明になっていく思いがするほどです。 作品に関しては，「ピアノ・フォリオ」とプレイアデス舞曲集第６〜９集は， 前作の録音後も毎年１作のペースで作曲されていったんだそうで，第８集を除 き，いずれも田部京子に献呈されているということです。また，最後に収録さ れている「２つのロマンス」は，前作の録音後の田部京子の誕生日にプレゼン トした曲だそうで，１曲目は名前の音名，２曲目は誕生日の数字が曲に組み込 まれているということです。 それからこのＣＤでは，初めに「４つの小さな夢の歌」と「３つのワルツ」 というが収録されていますが，これは吉松が十代から二十代の初め頃に書いた ピアノ小品や，ラジオ番組あるいは舞台音楽使ったやさしくシンプルなメロディ を集めた作品ということで，チャイコフスキーの「四季」にやや近いものを感 じますが，いずれも可憐でデリケートなメロディをしみじみと聴かせてくれて おり，後のプレイアデス舞曲集では希薄なナチュラルさやぬくもりが感じられ るのは魅力的です。 このＣＤは要するに２匹目の泥鰌みたいなものでしょうけど，私としては， これだけ魅力的な録音が聴けるのであれば，さらに続編が出てほしいと思って いるくらいです。とはいえ正直なところ，この作品は聴き手との相性の問題も あって，評価なり印象は以外に両極端に分れそうにも思えます。このことに関 しては百文は一聴にしかずということで試しに聴いてみてはいかがでしょうか。
2001.7.25
