ルプー＆プレヴィンによる，シューマンとグリーグの協奏曲
◎シューマン ピアノ協奏曲 <1973.6> グリーグ ピアノ協奏曲 <1973.1> ルプー（ピアノ），プレヴィン指揮，ロンドン響 英DECCA 466 383-2 デッカのレジェンドシリーズに，懐かしの録音があったのでゲットしてきまし た。１９７３年の録音で，ＬＰ時代にはこの２曲を１枚に収めたレコードの定番 の感があったのですが，ＣＤ時代になって再発を重ねるうちに価格も下がっていっ て，国内盤ではなんと１０００円で売られています。 ◎ロンドン POCL-9842（限定盤） 今回のＣＤを聴いてみた印象ですが，音質向上をセールスポイントにしている だけあって，芯のしっかりした生々しい音を聴かせており，そればかりか音の表 面のざらつきのようなものまで聴かせていて，この録音が行われた時期のフィー リングを感じさせるような音質です。 演奏の方は，叙情性に満ちたデリケートな表現を聴かせていたように思ってい たのですが，改めて聴いてみると，確かにこまやかな配慮の行き届いたデリケー トさを感じる演奏ではあっても，屈折したところのない爽やかな演奏という印象 の方が強くて意外な感じがしました。 これはプレヴィンの指揮にも感じたのですが，聴かせ上手というのか，表現自 体が巧みでわかりやすく，誰でも抵抗なく聴ける演奏なんですね。それゆえ，こ の録音はこれらの曲のスタンダードとして広く聴かれてきたというこのなのでしょ うか。私自身も確かに２０年前ならこの演奏には何の不満もなく満足して聴いて いただろうと思います。 ところが今はすっかり耳年増になっちゃったんで，今聴くと，この演奏はやっ ぱり若いな，まだまだ表現力は弱いな，という気がします。そんなことは言って も，人生のその瞬間その瞬間は２度と繰り返さないのですから，これは紛れもな い若き日の演奏の記録であるわけで，それに対してない物ねだりをするのは大人 気ないことには違いないのですが，私の記憶の中にあったこの演奏の印象と，改 めて聴き直した印象とでは，予想外のギャップがあったために，こんなはずじゃ ・・・という心理状態になっちゃったんですね。 結局，これは思い出を美しいままにしておけなかったということなわけなんで すが，長年ＣＤを聴いていればこんなこともあるかな・・・ってとこでしょうか。 かつて聴いた録音を改めて聴くというのはどうしたってやめられませんもんね。
2000.3.3
