アムランの弾く，ゴドフスキ編ショパンエチュード
ショパンの練習曲を基にした，ゴトフスキの練習曲集全曲のＣＤをゲットし てきました。 ◎ゴドフスキ ショパンの練習曲による５３の練習曲 アムラン（ピアノ） 英HYPERION CDA67411〜2 この曲集の録音というと，あの超絶ピアニスト，ミハイル・ナナサコフが ２７曲録音していました。その他では，カルロ・グランテが全曲録音していま すが私は未聴です。 さっそく聴いてみた印象ですが，これは実はナナサコフ盤を聴いたときにも 感じたのですが，技術的にはやたらと込み入った曲になってはいるものの，そ れで表現力が増しているとは思えず，華々しい演奏効果も感じられないので， これは聴き手のためのというよりは，弾き手の技術的チャレンジのための曲な のかなと思いました。 それと，技術的にややこしくなった分だけ，流れが悪くなったなというのも ナナサコフ盤でも感じていたのですが，これに関してはアムランの方が巧まず 滲み出る無理のない流れを作っているように感じました。 ゴドフスキの編曲は，作品１０の方は原作がストレートな書き方をされてい ることもあって，込み入った編曲との相性は余りよいとは思えませんでした。 作品１０のなかで印象に残ったのは，作品１０の６を左手だけの曲にアレンジ したもので，これは原作に劣らない情感を醸し出していました。 一方，作品２５の方はゴトフスキの編曲ともうまくマッチしてるように感じ られ，作品２５の１，５，９，１１などはオリジナル以上に楽しく，あるいは ドラマチックな表現が聴けて聴き応えがありました。作品２５の１２は左手だ けなんですが，これも左手だけというのは信じられないくらいの鮮やかな演奏 でした。 この曲集の５３曲中，左手だけで演奏されるのは何と２２曲もあります。ど の曲も巧みに書かれていて，片手で弾いているとは思えないほどの華麗な響き を聴かせているのですが，例えば主旋律をオクターヴ下げて弾いていたりする ところは片手で弾くために無理しちゃったかなという気がしないでもありませ ん。 また，この曲集の最後の２曲は凝った趣向がされていて，１曲は作品１０の ５と作品２５の９が，もう１曲は作品１０の１１と作品２５の３が左右の手で 同時に演奏されます。こんなアクロバティックな曲を現実に弾けるというのは 聴いていても驚異的なことのように思えます。 このＣＤは，楽譜を見ているだけでなくやっぱり音で聴きたいこの超絶技巧 作品を，アムランが見事に弾ききった大変に聴き応えのある録音です。収録時 間も１５３分強でかろうじてＣＤ２枚に収まりました（カルロ・グランテ盤は ３枚）。これは聴いてみる価値のある録音だと思います。
2000.3.1