巖本真理のヴァイオリン小品集
巖本真理弦楽四重奏団の録音を次々にリリースしている山野楽器から， 今度は巖本真理がヴァイオリンソロを弾いているＣＤが出ているのを見つ けて入手しました。 ◎グノー アヴェ・マリア シューベルト 子守歌 ブラーガ 天使のセレナード リムスキー＝コルサコフ（クライスラー編） 歌劇「サトコ」〜インドの歌 ブラームス（ホッホシュタイン編） ワルツ 作品３９の１５ ドヴォルザーク（クライスラー編） インディアン・ラメント マルティーニ 愛の喜び マスネ 劇音楽「復讐の三女神」〜悲歌 リスト 愛の夢〜第３曲 メンデルスゾーン 歌の翼に グルック（クライスラー編） 歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」〜メロディ ゴダール 歌劇「ジョスラン」〜ジョスランの子守歌 シューベルト 劇音楽「ロザムンデ」〜バレエ音楽 ポンセ（ハイフェ ッツ編） エストレリータ グレンチア・チャンヒ（伝ペルゴレージ作） ニーナの死 モーツァルト ディヴェルティメント第１７番Ｋ３３４〜第３楽章メヌエット フランティシェク・トルドラ セレナード ムソルグスキー 歌劇「ソロチンスクの定期市」〜ゴパック チャイコフスキー なつかしい土地の想い出〜第１曲「瞑想曲」 巖本真理（ヴァイオリン），坪田昭三（ピアノ） 山野楽器 YMCD-1083 録音は１９６０年と６２年で，巖本真理の３０代前半の録音というこ とになります。 私も巖本真理のソロというのはこれまで聴いたことがなく，しかも， このＣＤの収録曲は，ヴァイオリン小品といっても特に親しみやすいメ ロディに満ちた，親密な作品ばかりで，いったいどういう演奏を聴かせ るのか興味津々でした。 実際に聴いてみると，ふくらみも柔らかさもない，非常に痩せた感じ の演奏ではあるのですが，そこには痩身の色気があって，そればかりか， 妖気ともいうべき妖しい魅力が漂っていて惹き付けられます。 世にヴァイオリニストはたくさんいて，これら小品なんてそれこそ星 の数ほど演奏されている中で，これほど聴き手の耳を捉えて離さない， 強烈な魅力を持った演奏は滅多にないのではないでしょうか。 正直なところ，大して期待しないで聴いたのでしたが，ここまでの演 奏とは全く想像もできませんでした。選曲も非常にいいですし，ブラー ガもマルティーニもゴダールも現在他に国内盤がないようなので，この 点でも貴重ではないでしょうか。
2000.2.5