アシュケナージのチャイコフスキー・ソロ

　アシュケナージがピアノを弾いた新譜を見つけたのでゲットしてきました。


◎チャイコフスキー　１８の小品　作品７２〜第５曲「瞑想曲」
　　　　　　　　　　６つの小品　作品５１〜第２曲「少し踊るようなポルカ」
　　　　　　　　　　熱い告白    
　　　　　　　　　　１８の小品　作品７２〜第３曲「やさしい非難」
　　　　　　　　　　１８の小品　作品７２〜第２曲「子守歌」
　　　　　　　　　　四季

　　アシュケナージ（ピアノ）

　　英DECCA  466 562-2


　アシュケナージのソロというと，少し前に出たショスタコーヴィチが素晴ら
しいものでした。今回もロシア物ということで，期待して聴いたのでしたが，
今回も想像以上に素晴らしいものでした。

　力が抜けていて，さらりと弾いてるような演奏で，アシュケナージ自身の共
感と慈しみが滲み出ているような演奏です。本当にさりげない，なんでもない
ような演奏なのですが，それがすっと心に入ってくるようで，言いようもなく
感動してしまいました。

　おそらく私の下手くそな文章では，これ以上続けても同じことを繰り返し言
うだけになっちゃいそうですが，要するにアシュケナージの秀逸な技術と，洗
練された美しい演奏と，心の奥底にある作品への共感とが相まって，派手さは
全くないけれども，とにかく聴くものを深いところから感動させてくれる演奏
なのです。

　この部屋にも何度か書いていますが，私は常日頃アシュケナージの演奏を評
価している方ではなくて，優等生的でつまらないと思っていました。ところが
今年出たショスタコーヴィチの前奏曲とフーガでは，今回のチャイコフスキー
同様に，深い共感を感じる素晴らしい演奏で，作品のせいかもしれませんが，
ここにきてアシュケナージは今までのアシュケナージとは違う，心から心への
対話ができる希有なピアニストの境地に達したのかもしれません。

　唯一残念なのは，これだけの名演でありながら，タワーでもＨＭＶでもスペ
シャルプライスになってなくて，フルプライスで購入しなければならなかった
ことで，もしかするとバイヤーさん達もこれほどの名演とは思ってなかったの
かもしれないですね。「他店とおなじものばっかりじゃなくて，こういう演奏
こそスペシャルプライスにして売り抜かないとダメじゃないか！」とＣＤショ
ップで思わず苦言を呈してしまいました(^^;)

1999.10.3