未聴ＣＤを聴く１５　ポリーニ２０代のベートーヴェン

◎ベートーヴェン　ピアノ・ソナタ第２６番「告別」
　　　　　　　　　　　　　　　　第３１番
　　　　　　　　　　　　　　　　第２９番「ハンマークラヴィーア」
　シューマン　　　幻想小曲集〜第２曲「飛翔」
　ショパン　　　　１２の練習曲作品２５〜第１１曲イ短調「木枯らし」

　　ポリーニ（ピアノ）<1970.10.28>

　　伊ARKADIA  CDGI 917.1


　ミラノのヴェルディ音楽院でのライヴ録音。ポリーニ２８歳の頃の演奏にな
ります。少し前に聴いた，７０年代のポリーニのシューベルトの素晴らしさに
すっかり感心してしまったので，その余勢をかって，未聴だったこのＣＤも聴
いてみました。

　聴いてみると，余計な響きを削ぎ落とした感じの，スピード感のある完璧な
テクニックに圧倒されます。曲がベートーヴェンのソナタだし，最初の告別は，
技術的にしっかりしていて率直なのはいいけど，それだけじゃ足りないかな？
なんて思いましたが，続く３１番になるとその飾らない率直さが曲と妙にマッ
チして，構成感のしっかりした演奏でもあるし，清々しい感動の残る演奏になっ
ています。

　それから驚いたのが，次のハンマークラヴィーアソナタで，最初の音が鳴り
響いた瞬間，見事に吹っ切れた爽快な響きに心奪われる思いがします。ポリー
ニは１９７６年にこの曲をグラモフォンに録音していますが，そちらの方は響
きの充実感には優れていても，この演奏で聴けるスピード感とキレはありませ
ん。私自身，ベートーヴェンのソナタの中でこの曲はよく聴く方の作品ではな
いのですが，こういう演奏で聴かされるならばもっと頻繁に聴きたくなるだろ
うと思いました。

　続く２曲はアンコールですが，これがまた聴きもので，ポリーニの完璧なテ
クで飛翔を聴くというのはなかなかに贅沢な楽しみではないでしょうか。多少
早めのテンポですが強弱の幅が大きく，スケール感のある演奏が楽しめます。
木枯らしも，グラモフォンのスタジオ録音のような揃った感じの演奏ではあり
ませんがこれも勢いに乗った圧倒的な演奏です。

1999.9.15