石丸寛指揮，東京交響楽団のブラ４ライヴ
◎ブラームス 交響曲第４番<1997.4.17> 石丸寛指揮，東京交響楽団 日ＲＣＡ BVCC-37038 石丸寛の指揮生活４５周年記念演奏会のサントリーホールでのライヴ録音で す。当日は他に，ブラームスのドイツ・レクイエムも演奏され，既にＣＤが出 ています。このＣＤはブラ４の１曲だけの収録なので，４０分ほどの収録時間 でしかありません。 演奏の印象はというと，とてもいい演奏なんですが，通常のクラシックでの 名演の印象とはちょっと異なり，なんというか，やや無骨といえるほどの男っ ぽいロマンティズムにあふれたもので，この演奏に共感できる人であれば，本 当に沁みる演奏だと思います。 別に弾き崩しているわけでもなく，表面的な印象で言えばオーソドックスそ のものといえるのですが，そのフレージングから伝わってくるのは，クラシッ ク音楽の外の世界で海千山千，波瀾万丈の経験を経て人生の年輪を刻み込んだ 男が再び指揮棒を持って指揮したとき，十分に溶け合ったアンサンブルの中に， 巧まずして，それだけでは済ませられない，ワイルドさ，ざらつきのようなも のが滲み出ているのです。 私は石丸寛という指揮者のことはよく知らないのですが（ネスカフェ・ゴー ルドブレンドのＣＭでジュピター交響曲の指揮をしていたということくらいし か知らない・・・），普通の指揮者とは人生のバックボーンが違うような感じ です。こういう人と酒を酌み交わしながら語り合うことができたら，さぞかし 充実した時間を過ごせそうだなという気がしています。 単にＣＤを聴くということだけでも，様々な思いが去来するものだと改めて 感じ入ってしまいました。こんな思いを抱かせるＣＤもあるんですね。
1999.4.11
